04
「そうだな、ロックオン…」
口の中で小さく呟き、刹那は食事を終えて後片付けをしていた
の背後へと忍び寄る。
マシンに放り込めば皿洗いはやってくれるため、片付けというよりは食後の紅茶の準備をしているところだった。
「
」
呼びかけると、
は一瞬飛び上がって振り返った。
「驚いた。気配消して背後に立たないで、刹那。ま、いいわ。それより今日の紅茶はアールグレイでいい?」
「
、俺はお前が好きだ」
会話が噛み合っていないのを承知で、刹那は胸に湧き上がる衝動を目の前の
に伝えようと言葉を選び、そして強く抱き寄せた。彼が昔みた映画では、愛を伝える際にはこうしていたのを真似たのだった。
腕や胸に伝わる柔らかな感触や温かな熱、鼻先をくすぐる香りに、刹那は好きな人に触れたい、という感情を思い知る。
はというと、唐突に唐突を倍重ねにしたような想像もしなかった刹那の発言と行動に、脳が情報を処理できずフリーズしたような状態だった。
先程まで、昨日と同じように会話していただけだったと思い返す。
(いったい全体、何があった!?)
互いにそれとなく愛着はあっただろうが、何だか色々とすっとばしてこういう状況に至っているような気がしなくもない。
けれども相手は刹那なのだ。
仮にもガンダムマイスター、色々と普通が通じる相手ではない。
ぐるぐると考えると、耳元で刹那が更に言い募る。
「俺の恋人になって欲しい…俺を、お前の恋人にしてくれ…
」
抱き締める力を緩め、少し身体を離した刹那は、
の瞳を覗きむように見つめた。
「いいか…?」
そう問いかけた刹那の腕の中で、
の驚きに強張った身体から力がぬけていくのがわかった。
そうして、赤くなった顔の中、青の瞳をゆらゆらと左右に戸惑うように揺らめかせ、ついには俯いてしまう。
少しの不安を抱いた刹那の耳に小さく肯定の言葉が聞こえてきて、胸の中で湧き上がっていたものがぱっと弾けたようだった。
「……うん、私を刹那の恋人に…」
して、という言葉の前に、刹那は恋しい人の頬に片手を添えて上向かせると、そのまま誘われるように口づけた。一呼吸の間だけの、軽く触れ合わせた口付け。離した柔らかな感触を、もっと味わっていたいと、刹那は思った。
は口付けに閉じていた目を開くと、泣き出しそうに歪んだ表情で、けれども微笑む刹那の顔が目の前にみつけた。
「人を愛することを、ロックオンに教えてもらった。教わっていて、よかった。この気持ちを伝える術を知っていて、よかった。こんな気持ちになる相手に出会えて、よかった」
そういって本当に一滴、涙を零した刹那の普段見せない表情に、
の胸も色んな気持ちで一杯になってしまった。ときめくような、愛しいような、切ないような、そんな気持ちの数々。
「刹那、好き…」
理性の箍が先程の刹那の表情に緩んでしまったのだ。自分の口から飛び出した甘い言葉に、そうとしか自分にも思えなかった。
そうして二人は、互いに触れ合う感触に溺れていった。