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 ソレスタルビーイングがばらばらになってから後、刹那は地球で時を過ごしていた。
  も一緒だった。
 宇宙を漂っていた彼を回収したのは、彼女だったから。
  は経済特区日本の片隅に居を定めた。
 刹那は世界中を旅しながら、時折そこへふらっと立ち寄った。
 滞在は一週間のこともあったし、何ヶ月か続くこともあった。
 そうした生活が数年続いたころ、刹那は自らの変化に戸惑っていた。
 

01


 よくわからない感情が体の中で膨れ上がり暴発しそうになる。
 そうして沸き起こったのは、彼女に、 に触れたいという欲求だった。
  の瞳が自分を映すたび、正面から見返すことができずに視線を逸らした。けれども気付けば目が追っている。 の身体にこの手が触れると、すぐに離さなければという焦燥と、もっと触れていたいという気持ちが心に浮かぶ。彼女のことを考えると、心臓がうまく機能しなくなるようだった。
 女性だからといって、長く一緒に過ごしたプトレマイオスクルーのフェルトやスメラギらにはこんな気持ちを抱くこともなかった。
ただ、 にだけ。
「これが…」
 ロックオンが悪戯っぽく笑って語っていたことだろうか。
「刹那、どうかした?」
  の声が自分の名を呼ぶと、いてもたってもいられなくなる。
「もしかして、不味かったとか?」
「いや……美味しい、と思う」
 正直、頭と心がこんがらがって、口に運んでいる食べ物の味はよくわからなかった。違和感なく食べていたので、不味いということはない。そう思っての言葉だったが、 からは苦笑が返ってきた。
「美味しいと思うって何よそれ」
が作ったものなら、何でも食べる。それだけだ」
 言葉が足りなかっただろうかと言い直すと、 は視線を落として手元のスープをぐるぐるとかき混ぜた。
「真顔で言われると…ちょっと照れるな…」
「どうした?」
「何でもない!食べてくれて嬉しいってこと!」
  はばっと顔を上げると、頬を上気させながらも笑っていた。
その笑顔に、刹那は再び胸が大きく鼓動を打つ音をきく。
笑顔をもっと見たいと思う。笑わせてやりたいのだ。





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